= あるえ物語 =
読書と神話、ときどき雑記 童心の権化あるえのブログ
= あるえ物語 =
読書と神話、ときどき雑記 童心の権化あるえのブログ

【北欧神話5】ヴァン神族との戦争がアース神族にもたらした恩恵

 

 ー北欧神話小話ー

 " 運命の女神ノルン。その数は非常に多数とも言われるが、通常は巨人族の3姉妹である長女ウルズ(未来)、次女ヴェルダンディ(現在)、三女スクルド(過去)のことのみを意味する。 彼女ら3人の登場により、アースガルズの黄金の時代は終わりを告げた。それは栄枯盛衰の意の如く。"

 

 

ども、あるえです。

今日は引き続き北欧神話の物語を綴ります。これまでに世界の成り立ちや、オーディン、そしてロキの紹介をしてきました。今回からは発生した事象を中心に北欧神話の物語を紡いでいきたいと思います。その際登場する人物は都度紹介していきます。

本日はアース神族とヴァン神族の戦争とその後日談について。

北欧神話の世界には2種の神が存在します。それが先述の神族たちで、その種族の違いを簡潔に言うと「家系」の違いとなります。例えるなら「将軍家」の中で「源氏」と「平家」があったようなものです。

f:id:Ryo_9119:20190705115309p:plain

ニョルズ

アース神族はオーディンを家長とした種族、一方ヴァン神族はオーディンのようなポジションは描かれることは少なく一般的には「ニョルズ」と言う神が率いていたとされます。

ニョルズは海の神とされ、妻は彼の妹・・・と書くと首を傾げる方もいると思うので解説しますが、ヴァン神族では近親婚は日常であり文化でした。この点はアース神族と違うところですね。子はフレイとフレイアという双子の兄妹です。この兄妹については後述します。(妻はスカジという巨人であるという説もあります)

 戦争のきっかけ

さて、本題に参ります。9つの世界ができアース神族がアースガルズに住み始めた頃、彼らは多くの財産を持ち、明るく華やかな生活を送っていました。

そんな折、ヴァン神族の魔女グルヴェイグがアースガルズを訪問し、彼女はアース神族の女神達に「セイズ」という魔法を教えます。
セイズは主に女性が使用する魔法で道具を使用して固有の危機に瀕した際に、未来を見通し、敵をののしり、また魂を離脱させる、そのような魔法でした。(ヴァン神族は未来を見通す力を有する、と呼ばれる所以はこのセイズによるものかもしれません。)

しかし、セイズには副作用もあり使用の際には肉体的な快楽が伴いました。アース神族の女神たちは、この魔法にはまり込んでしまい、堕落してしまいます。

f:id:Ryo_9119:20190705115305p:plain

グルヴェイグの処刑

これを問題視したオーディンらは、グルヴェイグを槍で貫き処刑します。不死身の体を持つグルヴェイグは3度に渡って殺されかけますが、その度に蘇りました。こうしてグルヴェイグがアース神族から傷つけられたこと、あるいはグルヴェイグの魔法によりアース神族が侮辱されたことから、アース神族とヴァン神族との間で戦争が始まりました。

と、ここまでが通説で、このグルヴェイグに関しては諸説あります。グルヴェイグとは「黄金の擬人化」で神々を欲望にかりたたせた、とか或いはグルヴェイグを誰かアース神族の男神に嫁がせる為によこしたがグルヴェイグを貫いた槍は実は・・まぁ男神達によって陵辱を受けたことによってヴァン神族の怒りを買い戦争に発展したとも言われます。

いずれにせよ、グルヴェイグによって何かしらの誘惑を受けたという解釈で間違いはないと思います。

戦争と後日談 


こうして始まった戦争は長年に渡りました。はじめはヴァン神族が優位で、アースガルズの城砦が幾度と無く突き崩されましたが、アース神族もそれに負けじ劣らずヴァナヘイム(ヴァン神族の世界)にも似たような損害を与えました。
力は非常に拮抗しており一向に決着がつきません。やがて、戦うことに疲れ果てた神々は両族の指導者同士が会合して和解しますが、和解の証として両族からそれぞれ「尊い神」を人質として交換することになりました。

f:id:Ryo_9119:20190705115312p:plain

ヴァン神族との戦争

ヴァン神族からは指導者ニョルズとその子供であるフレイとフレイヤがアース神族に送られ、彼らはアース神族に歓迎されました。こういった経緯の元フレイとフレイヤはアース神族として扱われるようになります。ちなみにニョルズの妻である妹はアース神族がヴァン神族の近親婚の風習を嫌っていたのでこの時に離縁しヴァナヘイムに置いてきたとうエピソードがあります。

一方、アース神族からは容姿に優れ、美しく逞しいヘーニルと知恵者のミーミルがヴァン神族に送られました。ですがヘーニルはミーミルがいないと何もできない無能者でした。これに憤慨したヴァン神族は、ミーミルの首を切り落とし、オーディンに送り返してしまいました。

首を受け取ったオーディンは「ミーミルの知恵」を失うのは惜しいと考えて、薬と魔法をもってミーミルの首だけを生き返らせ、ヨトゥンヘイムにある「知恵の泉」の番人になりました。これが「ミーミルの泉」でオーディンが知恵を授かり、片目を差し出した話となるのです。

オーディンの話はこちら↓

www.ales-story.com

 また戦争が終わり和解する記念として、両神族全員が1つの器に唾液を吐き入れます。その和平の証を消滅させないために、唾液に人間の形を与え、クヴァシルという非常に賢い人物を作り出しました。クヴァシルに答えられない質問は皆無であったと語られています。

このクヴァルシという人物はしばしば他の逸話にも関わりがあり、例えばオーディンの記事の不貞の話で出てきた「詩の蜜酒」はクヴァルシの血で出来ているとも言われます。

そして、この戦争によって破壊された城壁の修復の話が前回のロキの子、8本足の馬スレイプニールの出自の話へと繋がります。

城壁修復の話はこちら↓ 

www.ales-story.com

伏線回収ばかりになりましたね。オーディンとロキの紹介より先にこの記事を書けばよかったと思いもしたのですが、どちらにせよ話の絡み合いが非常に多いのでこういう事態の回避は難しいですね(笑)

フレイとフレイヤについて

最後に彼らの紹介をしたいと思います。

終戦後アース神族の一員として迎えられた彼らは非常に有名な神であり、フレイは神々の中で最も美しい眉目秀麗な豊穣と子孫繁栄の神として崇拝されています。後にオーディン、雷神トールと並び三大神として数えられるようになります。また武勇の面でも「勝利の剣」と呼ばれるひとりでに敵をなぎ倒す剣を所持しており、数々の戦果を上げている。後の物語でこの剣を手放すこととなり、ラグナロクにて悲運をたどることになります。

f:id:Ryo_9119:20190705115300p:plain

フレイとフレイヤ

一方フレイヤは愛情と美、豊饒とセイズを司る女神の一柱で、豊饒神としての性質上性的に奔放(つまり性におおらか)でもあり先述した通りヴァン神族では普通のこととされていますが、父ニョルズや兄フレイとも肉体関係があったそうです。またなんといってもその美しさは世の男性の欲情を沸き立たせるには充分すぎる程であり、城砦再建の石工の件もしかり、度々トラブルを巻き起こす程であった。

本記事で取り上げたグルヴェイグは実はフレイであったとされる場合もあり、セイズが使えたことと、その美しさをもってすればなるほど納得できる解釈である。

あとがき 

ここまでがヴァン神族との戦争及びその恩恵の話となります。

ヴァン神族に纏わる話には性的要素が多いという特徴がありますが、これについて言及するのであれば、これは人間の素直な本能を描いた結果でもあるのだろうし、北欧と言う厳しい環境の土地において子孫繁栄はなにより重要なことだと思われるのでこういった要素が反映されたものではないかと推察します。

フレイが聖獣と定めたのは猪、豚、馬とされていますがこれも多産であった為と言われています。二人の父ニョルズについてはこの場面以外で語られることは少ないですが、後に「ロキの口論」という話の中で登場します。 

この戦争で結果としてアース神族はフレイ、フレイヤを始め、オーディンの知恵やクヴァシルという知恵者も恩恵として手に入れることになりました。

 

今回はここまで、以上が神々の戦争の話でした。

ではまた次回♪

 

★北欧神話の記事一覧作りました★

  ↓      ↓      ↓

https://www.ales-story.com/hokuousinnwa

 ↑      ↑      ↑

気になる方はこちらから全話見れます♪

※神話の内容につきましては諸説あります。この記事の内容はあくまで私の得た知識から成り立つものとなりますのでご了承ください。

直接記事と関係ないですがプロフページ更新しました♪