【北欧神話6】トールの愉快なヨトゥンヘイム冒険譚 前編
北欧神話小話
トールの名は北欧諸国では男性名として定着している。スペルはThorとTorの二種類、カタカナ表記は「トール」か「トル」が多く「ソー」と表記されることは少ない。また「トールの石を意味するトルステン(Torsten,Torstein)は北欧諸国とドイツ語圏で、英語に転訛したダスティン(Dustin)も男性名として定着している。
ども、あるえです。
今日は七夕ですね、皆さん願い事はしましたか?願わくば、この記事が皆さんの心にわくわくを届けられますように・・・。
さて、今回は北欧神話のお話の続き、トールの冒険譚をお伝えします。おそらく3記事連続でトールに関する話となります。
オーディン、フレイと並び北欧神話における三大神として数えられるトール、ここまでの記事の中でも幾度か名前は登場しましたね、彼は彼の持つ武器ミョルニルと並び現代においても言わずと知れた有名な神でありますし、北欧神話をモチーフにしたアメコミを元に作成された映画「マイティ・ソー」のソーはトールが由来です。それくらいトールは現代においても人気の神という事になります。
そんな彼の素顔、彼にまつわる冒険譚を紹介します。
トールの紹介
彼はアース神族で最強の戦神として伝わっており、雷、天候、農耕などを司り、力はアースガルズのほかのすべての神々を合わせたより強いとされる。(こうしてみると北欧神話の戦神チュールが霞みますね)
外見は燃えるような目と赤髪を持ち赤髭の大男として描かれることが多く、その姿からも連想されるように、性格は非常に豪胆、乱暴で激情家でした。
武勇を重んじる好漢ではありますが、その反面少々単純で激しやすく、何かにつけてミョルニルを使っての脅しに出る傾向があります。しかし怯える弱者に対して怒りを長く持続させることはなく、時に優しさも見せます。途方もない大食漢。
父にオーディン。母はヨルズ。妻にロキの話で登場したシヴともう一人ヤールンサクサがいます。息子にモージとマグニ、娘にスルーズ、シヴの連れ子のウルがいます。
人間からは農民階級に信仰された神であり、元来はオーディンと同格以上の地位がありました。 スウェーデンにかつて存在していたウプサラの神殿には、トール、オーディン、フレイの3大神の像があり、トールの像は最も大きく、真ん中に置かれていたとされています。
後に北欧だけではなくゲルマン全域で信仰され、地名や男性名に多く痕跡を残し、また最初の記事で紹介したように木曜日を意味する英語 Thursday やドイ語 Donnerstag などはトールが語源となっています。
雷神であることからギリシア神話のゼウス(雷ていケラウノス?)やローマ神話のユーピテルと同一視されました。
武器は稲妻を象徴するミョルニルといわれる柄の短い槌で「打ち砕くもの」という意味をもち、トールハンマー、ムジョルニアとも呼ばれる事も。敵を倒す以外に、物や人を清める作用があり、しばしばトールは結婚式や葬式で、この槌を使用しています。
本来はその重い槌部分に見合う長い柄が付くはずであったが、ロキの妨害のせいで柄は短いままであり、少々バランスの悪いものとなっているらしい。
従えた動物としてはタングリスニとタングニョーストと言う、トールの戦車を牽く二頭のヤギが存在します。トールが空腹になると彼らは食べられるが、皮と骨さえ無傷であればその2つから再び再生さるという逸話もあり、食料として扱われる場面も(笑)
なおこの戦車が走る際に立てる轟音が雷鳴とされている。
トールのヨトゥンヘイム冒険譚
さてトールの紹介が終わったところで彼とロキがヨトゥンヘイムへ出向いた時のストーリーを紹介しましょう。ロキの記事冒頭の小話の時の話です。
ロキの話はこちら↓
トールはロキと一緒に、二頭のヤギの引く戦車に乗って、巨人の国ヨトゥンヘイムに向かいます。ある晩ふたりはある農民のところに辿り着き宿をとります。トールは自分のヤギを殺して、皮を剥ぎ、山羊肉を大鍋の中に投げ込んだ。
トールは農民とその家族を呼んで一緒にテーブルにつくと「さあ、ジャンジャン食べてくれ。ただ骨は絶対に痛めないようにして、全て山羊の皮の上に置くように。」と言った。
農民の息子はチアルフ、娘はレスクヴァと言い食いしん坊のチアルフはみんなが居なくなると、トールの言いつけを破り山羊の腿(もも)の骨をナイフで割って、好物の骨の髄を食べてしまいます。
翌朝トールはミョルニルを振りかざして山羊皮と骨を祝福した。すると山羊たちは復活しますが、一頭だけ片足が折れていました。これにトールは憤慨し炎のように殺気立ち骨が白く浮き出すほどきつくミョルニルを握り締めていた。
あまりの威圧感に農民たちは泣き叫んで命乞いをします。彼らの恐怖を見るとトールは次第にかわいそうだと思い、チアルフとレスクヴァを召使いにすることで農民たちを許した。
トールたちは骨折した山羊を農民の家に置き、チアルフとレスクヴァを連れて旅を続けます。そして深い海を渡り巨人の国ヨトゥンヘイムへ立ち入ります。やがて、大きな森に着き一日中森の中を歩いたが抜けることはできなかった。
あたりが暗くなると彼らは宿を探した。すると運よく大きな小屋を見つけ、そこに泊まることにします。しかしその夜に大地震が起こり、彼らは避難場所を探します。小屋の真ん中の右手に小さな個室があったので彼らはそこに逃げ込みます。
トールはいつ巨人が来ても良いようにミョルニルを握り締め、部屋のドアの前に座っていました。ロキとチアルフとレスクヴァは部屋の中に入っていて怯えていました。そしてその場の全員がすざましい騒音とうなり声を聞きました。
翌朝トールが外に出てみると巨人が横になっていました。巨人がいびきをかくたびに大地が揺れているので昨夜の地震はこいつの仕業だと感づき、トールは身構えミョルニルを握ります。ところがその途端に巨人が目を覚ましすぐに起き上がりました。トールは驚いてミョルニルを振り下ろせませんでした。
トールは彼に名前を聞くと巨人は答えます。「わしの名はスクリューミル。お前がアースガルズのトールであることは知っている。ところでわしの手袋を知らないか?」スクリューミルは辺りを見回し、手を伸ばして手袋を拾った。なんと昨夜泊まった小屋こそが彼の手袋であった。
スクリューミルは一緒に旅をしたいと言い、トールもそれに賛成した。彼は荷物をバラバラに持つのは面倒だから一緒にしようと提案します。みんな賛成し巨人はトールたちの荷物を自分の袋に入れて、口を縛るとそれを背中にかついだ。
スクリューミルは先頭に立ち、大またで歩いた。遅れないようにその後についていくのは、足の速いチアルフでさえ苦労した。夕方、一行は大きな柏の木を見つけ巨人は「今夜はここで泊まる。私はもう寝るがお前たちは勝手に袋から食料をとって、夕食をとれば良い」と言った。
巨人は大きないびきをかいて寝てしまった。早速トールたちは食事をとるために、紐ほどきにかかったが、一向に紐がゆるまない。腹を立てたトールは、ミョルニルで巨人の頭を殴った。
彼は眠たさそうに目を開けると「木の葉がわしの頭に落ちたのかな。お前たちはまだ寝ないのか?」と言った。トールは「これから寝ようと思ったところだ」と答えた。
トールたちは別の木の下に行ったが腹は減っているし、巨人のいびきはうるさいしで中々眠れない。夜中になると彼のいびきは一層エスカレートした。トールは起き上がって、今度は殺してやると思った。
トールはミョルニルを高く持ち上げて打ち下ろしたが、巨人は死ななかった。巨人は目を覚まして「頭の上にどんぐりが落ちたんだな。お前はそこで何をしている?」と言った。トールは「ちょっと目が覚めたんだ。」とごまかします。
トールは横になり巨人が熟睡するのを待っていた。明け方の少し前にいびきがうるさくなったので、好機だと思い満身の力をミョルニルに込めて力いっぱいに打ち下ろした。しかし巨人は頬をなでてこう言った。「木の枝が顔に落ちたらしい。鳥の仕業だな。なんだ起きていたのか。そろそろ出かける支度をしよう」と言った。
旅支度が終わるとスクリューミルはこう言った。「もうすぐ巨人の住む国があるが、お前たちみたいなチビが手柄話などをすると、ウトガルド・ロキは怒ってしまうぞ。行かないほうが身のためだ。どうしても行きたいなら、東を目指すがいい。わしの目的地は北にあるから、ここでお別れだ。」
スクリューミルは北に向かい、トールたちは東に向かった。
あとがき
今日はここまで、次回後編となります。
彼の人柄の良くわかるエピソードですね、後半の巨人の話といい、トールは何かと所謂ネタ扱いされることが多いです。次回後編はもはや笑い話で、後にそのことを同行していたロキに蒸し返され馬鹿にされます(笑)
豪快で、ちょっと抜けたトールだからこそ人々に愛されているのかもしれませんね。
ではまた♪
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※神話の内容につきましては諸説あります。この記事の内容はあくまで私の得た知識から成り立つものとなりますのでご了承くださいませ。
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